こんにちは!Hultドバイキャンパスの Kazuki です!
ロンドンのSayaさんからバトンを受け取りました。素敵な第一走、ありがとうございました!
いきなりですが、告白させてください。
私の学位はBachelor of Arts in ENTREPRENEURSHIP。名前に「アントレプレナーシップ」が入っています。それなのに、入学して1ヶ月が経った今でもなお、この言葉をうまく説明できません。
今回は、その「説明できなさ」について書いてみようと思います。
Contents
入学前は、答えを持っているつもりだった
私は東北大学の工学部で宇宙工学を学びながら、高校3年生のときに立ち上げたSpace Pidginという法人で成層圏バルーンの開発を続けてきました。目指しているのは、宇宙エレベーターの実現させ、世界に宇宙の感動を届けることです。
入学前の私にとって、「アントレプレナーシップとは?」の答えはシンプルでした。「まだ世の中にないビジネスで価値をつくること」。自分はそこに向かっていると、はっきりわかっているつもりでドバイに来ました。
その答えが、1ヶ月で通用しなくなった
入学してまず驚いたのは、「アントレプレナーシップとは何か?」という問いに、何度も出会うことでした。それも一つの授業ではなく、複数のクラスで、形を変えて繰り返し問われます。
そして問われるたびに、教室には違う答えが並びます。あるクラスメイトによると「チャレンジしようとする気持ち」、教授は「意見ではなく証拠で判断すること」だと言い、ゲストスピーカーは「儲けることでなく、問題を解くこと」だと言っています。どれも間違っていないように聞こえるし、どれも全部を言い当てているようには聞こえない。
入学前に用意していた「まだ世の中にないビジネスで価値をつくること」という私の答えも、その中の一つにすぎませんでした。問いに出会うたびに答えが増え、正直なところ、1ヶ月経った今も「結局よくわからない」というのが本音です。
ただ、言葉で定義できない代わりに、体で少しだけ掴めた瞬間がありました。
20枚の紙だけを使い、できるだけ高い構造物を作るというワークショップで、チームに分かれて競ったときのことです。ある人は早々に紙を手に取り色々な形を試し、ある人はチームの意向をまとめる中、私は折り紙のように「キレイに折ること」を意識し、カドとカドを合わせてキレイな柱を作っていました。すると、チームの中でどうやら私の柱が強くていいらしいということになり、どうやったらキレイに折れるのかチームに教えることになりました。
日本人の私たちにとっては、折り紙のように折り目をつけるのは当たり前のことであっても、折り紙を知らない彼らにとっては、このコツは価値あるものになるということを感じた瞬間でした。
このワークショップを通して、チームの中での自分の役割が見えてきました。私は、誰かのアイデアに基づいてより良い方法を考える提案者だったのです。この気づきには自分でも納得しています。私はアイデアを出したり新しいことを考えたりするのが好きでありつつ、ゼロ→イチのアイデアマンかと言われるとしっくり来ていなかったのです。
起業家は組織の代表として、なんとなく「全部自分で始める」ものだと思っていました。でも、アントレプレナーシップが一人の起業家の資質だけを指すのではなく、チームの中で自分がどう機能するかまで含むのだとしたら、私はまだその入口に立ったばかりなのかもしれません。
【私たちのチームが建てたペーパータワー】
クラスメイトから感じたこと
クラスメイトの顔ぶれにも、良い意味で裏切られました。
アントレプレナーシップ専攻と聞いて、私は「ゼロから会社を立ち上げたい人たち」が集まる場所を想像していました。ところが実際には、圧倒的に多いのが、家業、いわゆるファミリービジネスを継ぐつもりの学生たちです。例えばインドの実家で営む建設業やペットショップなど、多岐に渡ります。
最初は意外でした。でも話を聞いていくうちに、彼らにとっての「継ぐ」は、ただ引き継ぐことではないのだと感じるようになりました。親の代から続く事業を、自分の代でどう変えていくのか。ゼロから始めるのとは違う形で、彼らもまた何かを生み出そうとしています。アントレプレナーシップの答えが一つに定まらない理由が、ここにも一つある気がします。
一方で、すでに自分のスープブランドを立ち上げている人や、これからファッションブランドをつくろうとしている人もいます。家業を背負う人と、ゼロから自分の名前で始める人が、同じ教室で同じ問いに向き合っている。その幅の広さこそ、この学部の面白さだと思います。
そして、私にとって一番刺激的なのが、ある授業の課題です。
その授業では、自分が今進めているプロジェクトについて2週間に1回報告し、教授やクラスメイトからフィードバックをもらいます。つまり、「自分のプロジェクトを持って、実際に動かしていること」が最初から前提になっているのです。私は、スペースバルーンの事業化について報告しています。
学ぶために何かを始めるのではなく、始めていることを、学びの場に持ち込む。これまでSpace Pidginの活動と大学での勉強は、どこか別々の世界にありました。それがここでは、毎回の授業の中で一つにつながります。2週間ごとに「前回から何が進んだのか」を問われる緊張感も含めて、私にとってはこれ以上ない環境です。
【初めてのピッチコンテストを終えて】
宇宙エレベーターという、途方もない構想を前にして
この1ヶ月で考えが変わったことで、自分の活動の見え方も少し変わりました。
宇宙エレベーターは、私が生きているうちに完成するかどうかも分からない構想です。会社を一つ立ち上げて解決できるような話ではありません。それでも、成層圏バルーンという「今できる一歩」から取り組んでいる。
今の私は、「解決策よりも問題に恋をする」というアントレプレナーの姿勢からすると、矢印の向きが逆なのかもしれません。誰かが抱える問題を解決したいという思いよりも、宇宙エレベーターを作りたいという思いが先行している。
技術者として「どう作るか」を考えてきた自分が、ここでは「なぜ、誰と、どう広げるか」を問われ続けています。その問いの重さこそが、私がこの学位で学びに来たものなのだと思います。
それでも、今の時点で答えるなら
説明できない、と冒頭で書きましたが、1ヶ月目の仮の答えを置いておきます。
アントレプレナーシップとは「気づかれていない問題に焦点を当て、チームで解決する姿勢」
ビジネスのタネは、漠然としたアイデアではなく、人々が抱える痛みやストレスに潜んでいます。その痛みを鎮める鎮痛剤・痒いところに手を届かせる孫の手こそが、アントレプレナーシップでいうビジネスアイデアなのではないかと思うのです。
4年後、この答えはきっと書き換わっていると思います。そのときにもう一度、このブログに戻ってきて答え合わせをしたいです。
学部から海外のビジネススクールに進むという選択肢が、どこかで迷っている誰かに届けば嬉しいです。