Boston

在校生ブログ_#58 キャリアを武器に変える1年、Hult MBAのリアル

はじめに:自己紹介

はじめまして。Bostonにて、Hult Global One-year MBAを履修しているShinです。私は日本の大学卒業後、大手電機メーカーに入社、その後、産業用ロボットの事業部で以下のキャリアを歩んできました。

国内営業(6年)→海外営業(1年)→事業開発マネージャー・北米駐在(5年)→事業部北米責任者・北米駐在(3年)

特に最後の3年間はアメリカにてアメリカ人・日本人・メキシコ人・ブラジル人・ドイツ人といった多国籍なメンバーが混在するチームにて責任者をさせていただき、充実しながらも自身のマネージャーとしての力不足を痛感することが多くありました。そして本帰国がそろそろといったタイミングで、会社のMBA支援プログラムに思い切って応募・合格し、Hultに社費留学といった形で1年間学ばせていただいております。今後、8月に卒業を予定しており、9月からは海外M&A案件を含む、コーポレート戦略に携わる仕事を行う予定となっております。

私が40歳を目前にしてわざわざMBAに来た理由は大きく2つあります。

  • 経験や直感だけに頼るのではなく、アカデミックな知識と論理的思考力を併せ持つリーダーになりたかった。

というのが一つ目の理由です。マネージャーとしてチームを率いる中で、自分の判断が過去の経験に偏っており、理論的な裏付けに乏しいと感じる場面が多くありました。実際に、毎月の自部門のP&Lを経理から受け取っても、それを管理会計の知識から深く分析し、明確なアクションに落とし込むことができていなかったことは一例です。もちろん、書籍や独学でも知識を得ることは可能です。しかし、私自身も採用に関わってきた経験から強く感じていたのは、MBAという学位は単なる学習の証ではなく、「その知識や引き出しを持っていることが社会的に認められている」ことの証明でもあるということです。特にアメリカの企業文化においては、MBAは非常に一般的で、私の上司や、そのまた上司もMBAホルダーでした。そうした環境の中で、自分が本当にリーダーとしての信頼を得ていくためには、アカデミックな土台を“肩書き”としても備える必要があると考えていたのです。

  • 多様性のある環境でのリーダー経験を更に深め、自分の武器として磨き上げたかった。

これが二つ目の理由です。それまでも異なる国籍や文化背景を持つメンバーと協働し、マネジメントに携わる機会を得てきましたが、それはあくまで一つの企業組織の枠内での多様性であり、職種や考え方、業界などの広がりには限界がありました。一方で、フルタイムMBAでは、業種も職種も全く異なる仲間たちとチームを組み、実際のビジネス課題に取り組む機会が豊富にあります。今までの職場での多様性とはまた違い、バックグラウンドも考え方も本当にバラバラな人たちと一緒に学ぶことで、自分のリーダーシップの幅を広げることができると思っておりました。Hultはそういった点では特に多様性に富んだスクールです。実際、私自身 他校からのオファーもありましたが、最終的には“多様性と協調性”を重視するHultの方針に共感し、ここを選びました。その判断は今でも正しかったと確信しています。

写真①:11月~12月のTeam11, グループワーク中

 

Hultの魅力と超実践型の授業スタイル

既にご存じの方もいるとは思いますが、ここで改めて私が考えるHultの魅力を伝えたいと思います。

まずはじめに伝えたいのは、Hultが他のスクールよりも “圧倒的にグループでのアウトプットを重視した教育” であるといった点です。私の友人で、欧米の他スクールでMBAを取得している友人も数人いるのですが、確認すると授業の内容としてはどこのMBAも学ぶ内容は変わりません。但しHultの場合、入学する9月から4月までの8か月といった必須科目期間の間で、所属するグループ(4~6人で構成)が4回変わり、ほとんどの授業をそのグループでの活動を中心に過ごしていきます(各授業に個人課題もあります)。そのグループワークの量は、他のスクールよりも圧倒的に多いと思います。”多様性の中でのグループワーク” と言ったら響きは良いのですが、実際は全く協調性のないメンバーもいれば、能力は高いが独自の考えで勝手に進める人もいて、本当に大変です。ただ振り返ってみると、私がアメリカでマネージャーをしていた際にも、同様にチーム内で協調性に課題のあるメンバー等と向き合う場面は多々ありました。一般的にアメリカは「成果が出なければすぐに解雇される」といったイメージを持たれがちですが、実際には、パフォーマンスの改善に向けたサポートやドキュメントの整備、改善プログラムの設計など、マネージャー側にも相応の対応と労力が求められます。そのため、単純に交代させれば済むという話ではなく、いかにしてメンバーのモチベーションを引き出し、前向きに働ける環境を作るかが非常に重要なマネジメント課題になります。そういった意味でも、Hultのグループワーク主体での教育は、協調性や影響力を発揮するトレーニングの場として非常に価値のある環境であると思います。特に日本人の場合、言語の壁もあり、どのように信頼を築いていくかという点で苦労することもあります。私自身もグループ内でメンバーとぶつかり、悩んだことも多かったですが、今となっては本当に良い経験をさせてもらったと思っております。

またもう一つHultの特徴で言いたいのは、”学んだことを即時にアウトプットするカリキュラムが組まれている” ということです。例えばマーケティングで、4Ps(Product, Price, Placement, Promotion)のフレームワークを学ぶ授業では(合計3時間の授業)、下記のような流れとなっております。

  • 初め1時間:4Ps概念を受講
  • 次の1時間:グループワークで実在する企業をピックアップして、その企業の4Ps戦略深掘りとプレゼン作成。
  • 最後の1時間:ランダムに選ばれたグループが皆の前でプレゼンテーションを皆の前で実施しフィードバックを貰う。

このように学んだことを、この時間軸でアウトプットを求めていくスタイルはHultならではと思っております。私が9月からHultで学ぶ中で、4つの異なるグループでの経験と、超実践型の授業での経験によって、”限られた時間の中で少し粗くてもスピード感を持ってアウトプットを出す” といったスキル(日本人が苦手な場合が多いスキル)は特に身に付いたと実感しております。

写真②:1月~2月のTeam7, Business Challenge後の食事会

写真③:3月~4月のTeam4, Business Challengeのプレゼン後

 

Elective TermとCity Seminar(リヤド・東京)

5月からはElective Termといった、自身が選択した授業を履修する期間になっております。この期間でキャンパスを変更するキャンパスローテーションを行う人もあれば、一つのキャンパスに留まる人もいます。私は、ボストンに留まりながら、戦略関係の授業を履修するのに加え、City Seminarといったグローバル各地で1週間といった短期で開催されるプログラムに参加をしました。City Seminarの概要と、今年の開催場所は下記となります。

  • City Seminar概要

Hultの短期集中型の海外実地プログラム。学生が実際に世界各地の都市を訪れ、現地の企業訪問、専門家による講義、文化体験を通じて、グローバルビジネスの現場を肌で学ぶことができる。プログラムは1週間の集中形式で行われ、各都市に異なるテーマ(例:ファイナンス、イノベーション、サステナビリティなど)が設定されていて、参加することで、実践的な学びとネットワーキングの機会を得られてキャリア形成にも役立つ内容となっている。

今年の開催都市(太字が私が参加したプログラム)

  • メキシコシティ (メキシコ): 中南米のビジネス戦略・機会・文化の理解
  • リヤド (サウジアラビア): 大規模プロジェクトと中東ビジョン2030に関する洞察
  • 東京 (日本): 日本のSociety 5.0とグリーン成長戦略、デジタル都市構想
  • ストックホルム (スウェーデン): 北欧の持続可能なビジネスとイノベーション、変革対応
  • シアトル (アメリカ): クラウドとテクノロジーがもたらすファッション産業の変革
  • マドリード (スペイン): 金融業界におけるデジタル変革

※毎年、開催場所・テーマは変わります。

※フルタイム学生だけではなく、Global Online学生も参加可能なプログラム。

 

特にサウジアラビアのリヤドは、過去に行ったことのない中東でサウジアラビア政府と民間企業が一体となって進めているVision 2030プロジェクトの建設現場の視察や、国営企業の幹部訪問など、決して個人では出来ないようなネットワークを築くことができました。また、世界中のHultメンバー(4つの主要キャンパス+Global Online MBA)から25名が集まり1週間の時間を過ごすことも、中々体験の出来ない、とても良い経験となりました。

写真④:リヤド City Seminarにてサウジアラビアの電力会社ACWA Powerを訪問

 

課外活動:ボーゲル塾

また、ここで少し話題が変わるのですが、私が参加していた課外活動の一つである、「ボーゲル塾」を紹介します。

  • ボーゲル塾とは

ハーバード大学名誉教授であり、日本研究の第一人者として世界的に知られるエズラ・ボーゲル氏が、次世代の日本人リーダー育成を目的に創設した私塾。主にボストン近郊の大学に所属する日本人留学生や研究者を対象に、20年以上にわたり、知的刺激と相互学習の場を提供してきました。ボーゲル教授の逝去後もその理念は引き継がれ、現在も塾の活動は継続されています。参加者は「政治」「社会」「経済」の3つの文化会に分かれ、それぞれの関心領域に基づいた勉強会を定期的に開催。年に数回開催される全体発表会では、ハーバード大学ケネディスクールの藤平新樹(ふじひら・しんじゅ)教授も参加し、発表に対して的確なフィードバックを行うなど、アカデミックな環境における学びの機会としても非常に貴重な場となっています。

このボーゲル塾では、今まで出会わなかった様々な日本人の方々と出会うことができました。具体的には私は国際経済分科会に所属していたのですが、その分科会に、ハーバードメディカルスクールに派遣されている医者の方、ハーバードやMIT、タフツに所属する官僚の方、その他 民間企業の駐在員や社費派遣で来ている研究者の方等、官・民・NPOといった様々な方面の方と一緒に意見をぶつけ合うといった非常に貴重な機会をいただけました。これはボストンといった世界有数のアカデミック都市で過ごす大きな利点であると実感しております。

写真⑤:ボーゲル塾の顧問、藤平先生との写真 *Executive Director at Harvard Weatherhead Center

 

これからHultを目指す方へ

Hultへの進学をご検討されている皆さまへ、心からのエールをお送りいたします。私は40歳でこのMBAプログラムに参加いたしました。一定のキャリアを経た後の留学には、年齢的な不安や家族との調整など、決して小さくないハードルがありました。ただ、それ以上に得られる学びと刺激は非常に大きく、挑戦して本当に良かったと日々実感しています。私の場合は、勤務先からの社費派遣という形で留学の機会をいただきました。そのため、すべての方に同じ選択肢があるとは言い切れませんが、それでも「今の環境から一歩踏み出したい」「グローバルな場で実践的に学びたい」と感じている方にとって、Hultは大いに可能性を広げてくれる場所だと実感しています。その理由は、Hultの学びがまさに“実践重視”かつ“多様性に満ちた環境”で構成されているからです。多国籍の仲間たちとビジネス課題に取り組む中で、言語や文化を越えて協働する力が自然と磨かれていきます。年齢やバックグラウンドに関係なく、それぞれの経験が学びの価値になる――そんな日々を過ごせる場所です。

そして、もう一点だけお伝えしたいことがあります。授業はもちろん、日常のコミュニケーションも含めてHultではすべて英語で行われます。私自身まだまだ学びの途中ですが、留学前の段階で英語力の基礎をしっかりと固めておくことは、現地での学びをより充実させるためにも非常に重要だと感じています。偉そうなことを言える立場ではないのですが、「英語があまりできなくてもなんとかなるだろう」といった気持ちで来ると、想像以上に苦労する場面もあります。せっかくの貴重な機会を最大限に活かすためにも、準備段階での英語力の強化は決して疎かにしないことをおすすめしたいです。加えてお伝えしたいのは、HultはグローバルMBAランキングではTOP30-100(ランキングの種類次第)に位置しており、ハーバードのような知名度はありませんが、実際に集まっている学生たちのレベルは非常に高いという点です。中南米・アジア・中東・アフリカ等で、グローバル企業で実務経験を積んだマネージャーや戦略コンサル出身者、スタートアップ創業者などが集まっており、日々のディスカッションの中で圧倒されることもあります。英語力はもちろんのこと、そうした優秀な仲間と対等に意見を交わすには、それなりの準備と覚悟が求められると感じています。

ご自身の環境に応じたさまざまな選択があると思いますが、年齢や立場に関係なく、一歩踏み出したいと思う気持ちがある方に、ぜひHultの環境を知っていただきたいと思います。もし何か具体的に知りたいことがあれば、下記の連絡先に気軽に連絡いただければと思っております。

皆さまの挑戦を、心より応援しております!!!

LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/shinichiro-sakamoto-7a7192151

 

写真⑥:コア科目最後の授業にて、クラスメートと