サンフランシスコMBAのKojiです。サンフランシスコMBAでの日々は、まさにベイエリア全体がキャンパスです。これまでの約半年の活動の一部を、紹介したいと思います。
<コンテンツ>
・自己紹介
・アントレプレナーシップとMBA
・ベイエリアとスポーツ
・ベイエリアとプロダクトマネジメント
・リーダーシップとソーシャルキャピタル
・最後に
<自己紹介>
私はスポーツビジネスを専門としており、Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)での現場経験を踏まえて、4年前にコンサルティング会社を立ち上げました。特にスポーツとテクノロジーの利活用を中心テーマとして、日本のプロスポーツリーグ・クラブの価値向上に取り組んでいます。また、デロイトグループの外部アドバイザーとして、スポーツ産業のイノベーション創出支援を手がけてきました。以前はテクノロジー業界で仕事をしており、ソニーとAIスタートアップでのプロダクトマネジメント経験が今に至るベースになっています。
これからはスタートアップの立場からグローバルな環境で勝負をしたい、と考えています。特にスポーツ、テクノロジー業界のいずれにおいても圧倒的な存在感があるのはUSマーケットです。そこでチャレンジしたいと考えており、HULTのサンフランシスコキャンパスに来たのは、この思いを実行していくためです。
実際に来て良かったのは、SportsTechスタートアップのCEO、プロスポーツクラブの経営者など業界のプロフェッショナルと直接会って、ディスカッションする機会が飛躍的に増えたことです。自分一人で考えるよりも、グローバルで最先端を走っている経営者との対話から気づくことが多いと実感しています。USではスポーツビジネスカンファレンスの開催件数も多いため、渡米前から主要なイベントをピックアップして参加しています。
(Sportel 2022 スポーツビジネスカンファレンス&テクノロジー展示会)
<アントレプレナーシップとMBA>
HULTでの学びは、入学前の6~7月にオンラインで開催された特別レクチャーからスタートしました。そこで聞いた2つのメッセージが、今でも印象に残っています。
・HULTではベイエリア全体がキャンパスだ。
・早く失敗をしよう。失敗は大きければ大きいほどナイスだ。
まず最初に認識したのは、HULTでの学びは学校のキャンパスに限定されたものではないこと。学校から徒歩30分圏内に、グローバル企業本社やスタートアップのオフィスがゴロゴロあります。妻とはよくSalesforce本社にある屋上庭園へ散歩しに行きます。こういった環境のためスタートアップやTEC関連のイベントも多く、HULTの隣にあるリーバイス本社のコワーキングスペースでも、定期的にピッチイベントが行われています。ベンチャーキャピタルや起業したばかりのFounderの生の声に触れること、真剣勝負の1分ピッチを見聞きすること、こういった経験はとても刺激になります。スタートアップのイベントに参加すれば、自己紹介を30秒以内で何度も繰り返す必要があるため、自分を何者としてどう売り込んでいくのかも考えさせられます。
(TechCrunchのスタートアップイベント)
また、The North Face創業者のHap Kloppさんのレクチャーでは、「とにかく早く失敗をしよう」、と言われたのが印象的です。失敗したと言えるだけ積極的にチャレンジをしようということだと思います。日頃は失敗も多くて落ち込むこともありますが、偉大なアントレプレナーに失敗しようと言われると、いちいち小さなことを気にしていられません。そう言えば、Jリーグ時代の上司だった村井チェアマンからも、「サッカーは、常にミスをするスポーツだ。どんな選手でもチャレンジすればミスをする。だからJリーグでは、PDCAの真ん中にミスを置いたPD(M)CAを実行しよう。」、と教えられてきました。サッカーでも起業でも、ミスを恐れず、チャレンジすることの基本は同じだと思います。
さて、授業の話をすると、チームでのプロジェクトが多いのが特徴です。テーマや企業が設定されていることもあるものの、自由に選べる際には日頃の関心事項を掘り下げる機会として活用しています。例えば、Business Challengeというクラスでは、「アーリーステージのスタートアップにおけるGo-To-Market Strategyの検討」がチーム課題でした。とりわけファーストカスタマーをどうやって確保するのか?実際に現場に足を運んで顧客ニーズを掴んでくること、という課題が与えられました。
私たちは、”台湾発のロボットスタートアップ”という設定で、チームメンバーと検討を行いました。飲食業界にフォーカスを当てた顧客ニーズ仮説を立てたところで、顧客獲得につなげるためのリードソースの一つとして、アクセラレーターや地元の銀行などを訪問してきました。アクセラレーターと一口に言っても、サンフランシスコ近辺だけで軽く100以上あります。それぞれが特化している業界や支援の特徴を調べながら、事業をブーストさせる手段としてのアクセラレーターの意義やメリットを考えるきっかけにもなりました。その後、ターゲット顧客の現場訪問も実施。Professor からは、その生の声を、まずストーリーとして語るようにアドバイスを受けました。プレゼンの内容以上に、このような検討プロセスこそ学びとなりました。
ちなみに、日頃感じることとして、日本で小規模ながらも起業をしておいて良かったと思います。ベイエリアで人と対話をする際に、起業やチャレンジすることに対してのリスペクトがあるからです。
(アクセラレーターのPlug and Playを訪問)
<ベイエリアとスポーツ>
プロスポーツの現場訪問をすることも私の重要な取り組みの一つです。USメジャースポーツ(NFL、MLB、NHL、NBA、MLS)はもちろんのこと、大学スポーツ(NCAA)やグラスルーツのスポーツ、デジタル融合型スポーツジムまで現場体験に事欠きません。私はサッカービジネス(Football)が専門ですが、USでFootballと言えばNFL(アメフト)になります。USでスポーツを話題にする上ではNFLを知らないと話にならないため、シーズン開幕からプレーオフまで通年で競技とビジネスをベンチマークしています。興行とスポーツテクノロジー利活用の両面でとても学びになりました。ちなみにサンフランシスコ49ersは、あと一歩でスーパーボウル進出だったので、勝ったことも負けたことも含めて、エキサイティングなスタジアムの体験は忘れられません。
こうした経験の中から課題を捉えて、事業アイディアを生み出していきたいと考えています。Economicsクラスの担当でありアントレプレナーでもあるProfessor Tedからは、ことあるごとに「カスタマーの声を聞きなさい」と言われています。その意味では、もっともっと現場を訪問していこうと考えています。また、USスポーツ界の現場で得た知見を日本にも還元したいと考えており、先日スポーツ庁主催のスポーツカンファレンスでグローバルスポーツのビジネストレンドについて発表しました。今後はさらに、英語でアウトプットする機会も増やしていこうと思います。
(サンフランシスコ49ers リーバイススタジアム)
さて、HULTキャンパスから一番近いプロスポーツはサンフランシスコジャイアンツですが、日本人としては阪神タイガースから藤浪選手がオークランドアスレチックスに入団したのはうれしいニュースです。HULTキャンパスからも、電車で30分ほどの距離にスタジアムがあります。そのアスレチックス社長の講演が聞けるということで、日系コミュニティのイベントに参加してきました。アスレチックスは、データ重視の野球で貧乏球団を勝利に導いた映画「マネーボール」の実話舞台として有名です。社長のDavidはプロサッカークラブの経営経験もあり、サッカーと野球の経営の話で盛り上がりました。HULTではせっかくビジネスアナリティクスを勉強しているので、次回はぜひスポーツビジネスとデータ利活用について、詳しく聞きにいきたいと思っています。
(KEIZAI SILICON VALLEY オークランドアスレチックス社長講演)
<ベイエリアとプロダクトマネジメント>
もちろんベイエリアには、他にもたくさんの領域でネットワーキングの機会があります。ヘルスケア、テクノロジー、プロダクトマネジメント、ベンチャーキャピタル、ワインなど様々なテーマのコミュニティやイベントがたくさんあるので、何かテーマ設定したらとても充実した生活になるのではないでしょうか。
私もスポーツ以外では、プロダクトマネジメントについて学んでいます。HULT MBAでもプロダクトマネージャーが希望職種としては人気があります。せっかくPMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)の資格を持っているので、サンフランシスコPMI支部の会員になったところ、オンライン・オフラインのイベント案内が活発に届きます。例えば、最近ではベイエリアで活躍する現役プロダクトマネージャー、プロジェクトマネージャーとの定期的なメンタリングプログラムに申し込みをしました。これからプログラムが開始される予定ですが、自分流にやってきたプロダクトマネジメントについて、客観的なアドバイスをもらいたいと考えています。
他にもプロダクトマネジメント関連のカンファレンスや専門スクールは多く、シリコンバレーの特色だと言えます。日頃の生活の中でも、FintechやHealthtechのアプリを使ったり、Amazon Go/Whole Foods Market/CVS Pharmacyなどのリテールで購買体験すること自体がプロダクト開発の学びになるので、現地のサービスを積極的に使うようにしています。
さらに、ベイエリアという枠を超えますが、コロナ禍でオフライン開催が中止になっていたカンファレンスが復活しているので精力的に出向いています。1月はラスベガスで開催されたCES 2023に行ってきましたが、スタートアップの仲間との再会からテクノロジートレンドのキャッチアップまでとても有意義でした。スポーツやテック系のカンファレンスはUS東海岸での開催も多いため、Spring TermはHULTボストンキャンパスの訪問も兼ねて遠征しようと思っています。いわば自主的なキャンパスローテーションと言ったところでしょうか。
(CES 2023 スタートアップ経営者の仲間と再会)
ちなみに、こういった活動は自分一人で考えているわけではなく、HULTキャリアドバイザーのSusan(サンフランシスコMBA担当)と、月に一回ディスカッションの時間を設けてもらっています。Susanは、米国での就職支援がメインの役割であるものの、それに留まらずに起業やネットワーキングなど様々な観点でアドバイスをくれる存在です。しかも入学前からオンラインでのディスカッションに付き合ってくれたので、欠かせないコーチとして感謝しています。毎回、45分間の時間枠があっという間です。例えば、直近のセッションで会話をしたのは以下のようなトピックでした。
・NFLプレーオフや放映権などスポーツ業界のディスカッション
・インダストリーレポートの英語執筆について相談
ところで、クラスの勉強はちゃんとしているの?(笑)、と聞かれるのが毎回のオチになっています。
<リーダーシップとソーシャルキャピタル>
クラスのトピックとしては、リーダーシップの授業で学んでいることを紹介したいと思います。Professor Cariから学んでいることは、自分のアスピレーション(Aspiration)を大事にしなさいということです。まずは自分で自分をリードする。次に第三者にそれをいかに伝えていくか?人をどう巻き込んでいくか?といったプロセスを経て、変革をリードしていく。これはまさに、起業のプロセスそのものだと感じています。
また、Professor Cariは「困った時でも助けてくれる”ソーシャルキャピタル”を築くこと」の重要性を日々強調しています。もちろん、そういった関係は即席で作れるものではなく、時間がかかると思います。この点、私がスポーツを趣味や仕事にしていて良かったと思うのは、スポーツを通じてたくさんのつながりを形成できることです。例えば、毎週プレーしているサッカーチームのアメリカ人の仲間は、ベイエリアで新しいことを進める上で、大事なソーシャルキャピタルとなっています。残りの期間もチームワークやソーシャルキャピタルを大切にしながら、取り組んでいきたいと思います。
(サンフランシスコ市内のサッカーリーグ)
(HULTキャンパス内卒業生との交流会)
<最後に>
私は40 代になってから留学することにしました。もっと早く来ていれば良かったと思う一方、年齢に関わらずチャレンジして良かったとも思います。留学やMBAの経験は必ずしも同じものではなく、個々人にとっての学びや意義を、見出すことができるのではないかと思います。
起業においても年齢や現状の立場は関係なく、問われることと言えば、何の課題を解決しようとしているのか?それをどう解決していくのか?というストーリーです。10代でビジネスを立ち上げる若者もいれば、60代のシニア起業家にも出会います。私としては「早く失敗しよう」と言われているのに、まだまだそれだけのチャレンジができていないことが課題です。
最後に、現在留学を検討中のみなさんも、様々な状況の中で、渡米というオプションを考えていることと思います。私から一つだけ言えることは、チャレンジスピリットさえあれば、HULTではベイエリア全体をキャンパスとして、ポジティブな経験が得られるということです。
次は、ロンドンキャンパスのNorikaに、バトンタッチしたいと思います!!